ロススタイン(Temblor),遠田晋次(東北大学災害科学国際研究所)
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熊本での地震続発を報告してから4ヵ月が経過しました.本年4月14日に発生した最初のM6.5地震から28時間後の16日には,同じ断層帯でM7.3地震が発生しました.この地震で,熊本市,益城町,西原村,南阿蘇村など,日奈久断層帯,布田川断層帯に沿った地域で甚大な被害がもたらされました.以下では,これまで得られたいくつかの知見を紹介します.
一連の熊本地震からどのような知見を得るか
日本のような強い経済に支えられ災害に強く回復力のある国でも,都市部におけるM7地震による影響はきわめて大きいことがわかります.地震による揺れや断層によるずれ,斜面崩壊によって多くの命が失われ,被害も甚大でした.
科学的に明白なことは,最初のM6.5地震によって,次のM7.3地震の震源にクーロン応力が加わり,それが大きな断層運動(地震)のきっかけになったことです.つまり,M7.3地震はM6.5地震のクーロン応力増加に起因する余震域から発生したことです.したがって,応力計算と対応する地震活動の解析は,将来の大地震を予測する上で強力なツールになります.ただし,このような予測は常に確率として示されることに注意が必要です.そもそもM6.5地震がM7.3地震を誘発する確率はそれほど高くはありません.しかし,M6.5が起こらなかった場合(通常の場合)よりもきわめて大きな確率となります.地震ハザード評価の向上のためにも,このような計算は迅速かつ体系的に実行されなければなりません.
Temblor ウェブアプリの新機能:全地球地震予測
先週,全地球地震活動レートモデル(GEAR)を新しくTemblor ウェブアプリに組み込みました.このモデルはBirdほか(2015)によって学術誌に公表され,ウェブアプリ上では,’Earthquake Forecast’としてマップレイヤーメニューに取り入れられています.GEARは地球上のどこでもマグニチュード6〜9の確率を表示します. GEARの計算は,GPS観測から得られた歪レートと過去40年間のM≥5.8地震のデータに基づきます.地図上での色表示は年間1%の確率で発生するマグニチュードです(年1%というのは,人生で60%の確率で経験することとほぼ同様).下図の熊本(青ピン)ではM=7の地震を一生に一度経験するということを示しています.一方で宮城県沖(2011年東北地方太平洋沖地震の震源域)では,M=8地震を同じく一生に一度くらいの確率で経験するという計算結果です.その点,M=9地震というのはきわめて希ということがわかります.その前のM=9クラスが西暦869年の貞観地震ではないかという説と整合します.全地球地震予測機能のiPhone, Androidへの実装は,皆さんからのフィードバックを受けてから行う予定です.
データの出典
東北大学災害科学国際研究所
気象庁
産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門
AIR Worldwide, http://www.air-worldwide.com/Publications/White-Papers/documents/Modeling-Supply-Chain-Disruptions-and-Contingent-Business-Interruption-Losses/
Bird, P., D. D. Jackson, Y. Y. Kagan, C. Kreemer, and R. S. Stein (2015), GEAR1: A Global Earthquake Activity Rate Model Constructed from Geodetic Strain Rates and Smoothed Seismicity, Bull. Seismol. Soc. Amer., 105, 2538–2554, doi: 10.1785/0120150058, http://geodesy.unr.edu/publications/bird_BSSA_2015.pdf
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